ピレネーへの旅


ビクトル・ユーゴの旅行記を読んで旅をした思い出


ビクトル・ユーゴ 日記から(鉛筆、ペン、水彩)

 いつのことだったか忘れてしまったが、妻から本を贈られた。ヴィクトル・ユーゴの「ピレネー」というタイトルの旅行記だった。その年、休みを取ることもなく忙しく働いていて、夏休みにはピレネー山中のどこか静かなところでのんびりしたいものだ、とのべつバカみたいにいっていたものだから、妻はそのことを覚えていて、古本屋で偶然に「ピレネー」という題の本を見て買ったらしい。本には著者が描いたイラストが16枚挿入されていて、ピレネー山中の村や建物が描かれていた。19世紀の風景は今と大きく変わるところもなく、私は旅情をかきたてられた。しかし、その年はついに行くことが出来ず、そうこうするうちに旅のことも本のことも忘れてしまい、生活が日常に埋没するとともに旅の想いも霧消してしまった。昨年の夏、ふと本箱からこの本を取ってパラパラとページを繰るうちにまたピレネーへの旅情がよみがえってきた。ちょうど休暇中だったこともあって、その時は、ほとんど衝動的に旅を決意した。妻に、旅に出ないか、というと即座に同意してくれた。